マンノン語り

マンノンさんが適当に語るページ

「廻る針の一夕語り」方位・羅針盤アンソロジー

2014.05.18 Sunday 08:47
くまっこさんの方位磁針アンソロジーに参加しました。

2014年3月9日(日)に開催された「本の社5」で販売されました。
5月5日(月)の文学フリマ、それとコミティアの方でも販売されました。

廻る針の一夕語り 特設サイト
http://zoujirusi.web.fc2.com/houianthology/index.html

羅針盤や方位を題材にした14の短編と連詩作ひとつがあり、284ページ
という大容量となっています。装丁やページデザインなども洗練されており
良書となっていると思います。私も太鼓判。

さて、それだけあるとどんな話か気になる所だと思うので簡単な説明
と私のちょこっと感想を上げとこうと思います。

以下続きから
 
『春萌す方』/恣意 セシル
1番最初のお話。冬のまんまで春が来ない世界。
兄ムゥルゥと弟ユゥトゥが春を待ち春を探して。
冬という閉ざされた時間から春を祝うというのは世界的
にも色々あり、また春は始まりとも関連づけられます。
豊かな命の息吹があふれる予感に満ちた一話になっています。

『魔女の遺品』/猫春
方位磁針アンソロジーでなぜか多かった印象のある魔女。
謎の魔女と謎の能力者。自分が何者なのか?明かされていく正体や
異能力はジュブナイル的なものを感じました。

東京魔人学園というゲームシリーズを思い出したり。
四神相応を題材にしたお話です(四神は方位と関連づけられます)

『北海道中エルボーバイシクル』/マンノン
私、マンノンが書いたお話。普通自分で書いた物は書かない
とは思いますがそこはそれで(?)ホラ話旅行記と言った所でしょうか。

題名の北海道中は勘のいい人はおわかりだと思うのですが
東海道中膝栗毛から取っています。膝(ひざ)、栗毛なんですが栗毛
の方は馬のことを指すようです。つまり移動手段のこと。
現代だったら馬は何かなーと思い。自転車でバイシクルとなって
ます。エルボーだとひじ。

「ひじで移動する気かよ!」「アイター!」というやりとりまで
想定をしています。いまだ突っ込みは無いので寂しいのでありますが。

『彗星旅団』/伊織
少年と老人の最後の天空ショーを見るための話。
ボーイミーツオールドマン(?)というのか。
ボトルメールでやりとりをする二人がデブリ(宇宙ごみ)
とともに落ちる人工衛星を一緒に見るために出発。
遊園地で落ち合い、自動人形の演目を見ながら衛星の最後
を見届ける。特別な時間を一緒に過ごすというのは
それだけで物語になると思います。

『明るいところで光る星』/日野 裕太郎
最初に思ったのはインドっぽい!でした。象が支える
世界という設定で、象が死ぬと大地もろとも崩壊し死んでいく
というハードな世界。その上で生きる人々は安寧の地
を求めてさまよう。

最後は仏教的な知識あると「それってどうなのよ?!」
そういう考えなしだと「この後どうなるんだろうね」
と感想もわかれるかもと思いました。

私が思い浮かんだ言葉は「一切皆苦」でした

『魔女の祝福と人の王』/相沢 ナナコ
方位を司る魔女たちが、中心の王都に生まれた王子を
祝福するためにおとずれる、という話。

方位と呪術的要素というのは世界各地に見られる話で
この話も神話的な要素を含んでるように思います。

マタイ,マルコ,ルカ,ヨハネよ,どうか私のベットに祝福を.ベットには四隅を,
頭の周囲には天使を4人.1人は見守り,1人は祈り,そして私の魂を運ぶものが2人

マザーグースの歌より。日本でも方位を守る四天王(多聞天、持国天、広目天、増長天)
など方位を守り、祝福する考えはどの国でもあるようです。

平沢進(平沢唯ではない)の「庭師king」を思い出しました。

『ケントと星のコンパス』/R・H・恵賭
孤児院で暮らすケントという少年。赤ん坊の頃から
持っている不思議なコンパスの話。

コンパスというのは指向性を持つというか目的のものを
指し示す、指針としての要素を持っている気がします。

ゲーム「ゼルダの伝説」でもコンパスは方向ではなく
トライフォースという力を持つ宝を指し示すものとなっていました。

ケント少年の宝とは何か。優しく見守る人達の思い
を感じる話です。

『鈴の音の響くところ』/くまっこ
呪い師鈴音一家のスズリが世界の中心にそびえ立つ塔へと
供物を置きに行くお話。塔が針を支えるもので、下には
国や街が広がり、針が影を落とすのでその時は冬のように。
塔の中にはミハシラさまと言われる人がいて、その人へ
供物を持っていくのが慣わし。ミハシラさまは時間や
季節も管理してるようで、それらのズレを感じているのだが…
世界そのものが方位磁針という面白い設定になっています。

序盤の展開と後半の展開の差が結構激しかったかもしれず。
謎テンションのアイツは一体何者?!となりました。

何気にこの話にも魔女が出てきます。

『宵闇喫茶』/なな
突然訳もわからずに迷い込んだ空間に現れた謎の喫茶。
中には黒いワンピースに白いエプロン姿の少女が。
何もわからず座らされた男は首にかけられた方位磁針を
お題にココアを飲む。

死を題材にしたお話では臨死体験のトンネルなどが
よく出てくるようにも思えます。また方角によって
様々な楽園があったり。

生きていると死んでいる、の中間の状態の考えが
チベットの方にあって「死者の書」にはよりよい
楽園への導きを実践的な方法で教えているものもあります。

生きても死んでもいない中間の状態を「中有」というそうで
その時にさまざまな体験をするというのがあり、それが人に
よっては喫茶店であったり酒場であったりするのかもしれません。

『止まない風』/まりも
東西に別れた国で富める東を貧する西が攻める話。
東西ということで真っ先に思い起こすのは東西ドイツの話
でした。誘拐された息子が敵国で出世している、と言う話
がマスターキートンであったような。

戦いによって失われるものは物質的な物だけで無く精神的
なものも根こそぎ壊されるのだなぁと思いました。

実際この話に近いような出来事も現実で起きているんでは
ないかとも思いました。

『彼女の右手』/久地 加夜子
謎の美女司書冴木さんとアルバイトの羽石くん。
本を整理していると奇妙な方位磁針を見つけるが……

霊感体質?の羽石くんが訳知り顔の謎の司書の冴木さん
のアドバイスを受けながら、その謎を追うという
オカルト的な要素を持つ話でした。死者の話を
聞きながら事件を追うというボーダーという番組
をこの前見て、死者との対話という部分で似てる
かなとも思ったり。未練を残した者が枕元に
現れて解決してくれるよう頼む、などはかなり
昔からあるタイプでもあるのかなと思いました。

二人のキャラがしっかりしてるので色々事件解決
していきそうな勢いがありました。

『時計さん』/高村 暦
先祖伝来の舶来ものの時計はフタが開かずに中身は
わからずじまい。壊れているのか動いている音もしない。

持ち主のおじいさんは修理をし、旅に出る助けにする
つもりだったが……

時計から方位を割り出す方法や、江戸時代など機械
もない時代には日時計など利用してました。時間と
方位というのはかなり密接な関係があったり。

おじいさんは持っていくつもりだったのか、託すつもり
だったのか。その辺の心情がちょっとわからなかった
のでどう思ってたんだろうな、と思いました。

『ネヴァーランドのわたしたち』/あずみ
イギリス戦時下での空軍の輸送補助部隊の話。女性が中心の隊の
ようでイギリスという舞台にふさわしい妖精などもからんできます。

イギリスの戦争史などは全然わからなかったので、wikiで付け焼き刃
してきました。たぶんバトル・オブ・ブリテンという1940年代の
WW2(第二次世界大戦)の話なのかな。イギリスの制空権を得るために
ドイツ空軍が攻めてくるのを迎撃。最終的にはイギリスが制海権、制空権
ともに守り切り、ドイツは撤退した戦いのようです。

ですが波状的に攻撃してくるドイツ軍の攻撃はすさまじく、イギリス空軍も
物量的に苦戦していたようです。壊れては直しを繰り返しますが、パイロット
不足は免れなかったようで、急遽外国人パイロットを招集し、多国籍軍
パイロットを導入してしのいでいたようです。

なかでも亡命中のポーランド人のパイロットは老練の生え抜きパイロット
だったらしく、その戦績も華々しいものがあったようです。おじいちゃん
ハリキリすぎ!な話も面白そうです(私の好みなだけか)

民間の補給部隊、ということで移動が主の話ですが、不思議な存在の妖精
が話に彩りを加えてるような気もします。妖精の正体は取り替え子じゃ
ないか!と一人で勝手に予想して盛り上がりました。

イギリスという国が舞台だからこその話となってるのかもしれません。

『南の空の、冬の三ツ星』/みやの はるか
高校の同級生だった巽(たつみ)の死をメールで受ける乾(いぬい)
乾は昔見たオリオン座を見つめ、亡き巽を思う

無数の星は死者の魂、そういう話はどこの国にもあるような
気がします。天に昇り静かに光り、地上に生きる者たちを見守る。

静かに願い、祈る。星にはそういうものが似合う気がします。

『指針と羅針』/泉 由良
連詩。色々な詩がありますが、最初の詩は小説なのかと思ってました。
この本の締めにふさわしい最後の詩「あなたへ」で綺麗にまとまった
ような気がしました。

さてこれで14の小説とひとつの連詩の感想が終わったのですが、まだあとお二人。

イラスト/いぬのほねこ
表紙絵は地図と方位磁針。その方位磁針にまたがる女の子の構図になっています。
よくよく見てみるとかなり色々なものがひそませてあって、面白い仕掛けも満載です。
上部の地図部分は文字もあって西の果てには空飛ぶ魚(west end fish)
がいたり。嵐のストームなどもあります。裏表紙にはEast moon大陸があり
the sanが輝いています。なぜか顔付き。そして私の名前マンノンの部分に
the sanがあるのです!太陽のような私!ステキ!と一人で浮かれました。

画面下部分は現実の建物やら木やらで、中央の女の子の乗ってる方位磁針は
実は時計にもなってるようで(よくみると短針や長針、秒針みたいのもある)
乗っている部分は夜をすぎ朝へと向かう部分。夜明けを連想させますが
これから物語が始まる、という予感の仕掛けになってるのかもしれません。

いんちき地図に適当大陸。ここは山があって川があって。王様住んでて。
こういう地図に適当に書いていってキャラを配置したりして勝手に物語を
作るのは文章書きはよくやることかもしれません。このイラストは面白い
ものが色々埋まっているお宝の地図なのかもしれませんね。

デザイン/ハルノブ
縁の下の力持ち。たぶん読む人が意識していないような場所をデザインされてる
のだと思います。題字のフォントなどもデザインされてるのでしょうか。意外と
文章配置、アクセサリーの配置、間隔などは違和感あるとすぐにわかるもので
「気にしないで読めた」というのはもっとも成功しているデザインではないかと
思います。
*(目次と鳥ちゃんの扉や方位磁石など、手が込んでいるおしゃれデザインがハルノブさん。
本文やコメントページデザインはくまっこさんだそうです。デザイン素敵!)

というわけで15人の書き手と2人の作り手の感想でした。多くの人の意見聞いたり
調整したりで中心となったくまっこさんはお疲れ様でした。人が集まるほどに大変
になるのは目に見えてるのですが、こうして素晴らしいものになったので大成功
と言えるのではないかな。

私も変わった題材(興味深い)の方位磁針・羅針盤の話が書けて楽しかったです。
また何かあったらかませてもらいたいなぁと思いました。

ヽ(´∀`)ノ <皆さんお疲れ様でしたー
 
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